昔の映画も面白い!80’s以前の映画8作品

コラム

トイレの中からこんにちわ。孤高の貴公子トノハジメです。

さて、私は前から映画が大の大好きで、最近では新宿バルト9のレイトショーで独り鑑賞の無間地獄に苦しめられている、末期の病的映画好きなのですが、お家で酒を飲みながら映画を観るのもまたオツだなと思う今日この頃です。

遡ること小学校の時。これまたドエライ映画好きである父親に連れられて通い詰めた実家近所のレンタルビデオ店は、(既に潰れてしまったものの)私の人生を決めた場所との言っていいです。親子共々そんなレンタルビデオの犬だった時代、シュワちゃんのアクション映画だったり最新ヒット作を借りようとする僕を横目に、父親が持ってきた古い映画が忘れられない私。今回はそんな“忘れられない”映画を調べて、さらに改めて鑑賞して、オススメの古い映画を抽出してみました。

「古い映画」というと定義をしないといけませんが、80’sのファンキーな映画群は抜きにして、遡って80年代以前の映画を抽出しております。実は80年代以前の映画はアイディアが豊富でありつつ、だいぶ無茶をやる些かワイルドな撮影方法が特徴で、「やりすぎだろ」と鑑賞しながら我に返ってしまうなんてことも。そんな稀代の人斬り・岡田以蔵の如き、80年代以前の映画のオススメ作品をまとめました。昔の名作ではなく、はたまたカルト映画でもなく、単純に「今観ても全然面白い」という観点から選びました。これで興味を持った方は是非ともすぐにお近くのレンタルビデオ店まで。

 

■博士の異常な愛情

 

▼公開年:1964年▼製作国:イギリス・アメリカ▼監督:スタンリー・キューブリック▼原題:DR. STRANGELOVE: OR HOW I LEARNED TO STOP WORRYING AND LOVE THE BOMB▼正式邦題:博士の異常な愛情/または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか

1964年公開、米ソ冷戦時代の核問題を題材にしたブラック・コメディ映画。監督は『2001年宇宙の旅』や『シャイニング』等、後世に多大なる影響を与えた名匠スタンリー・キューブリック。米ソ冷戦当時に作られているものの、あまりにもデリケートな内容をまとめていた為、公開の際に米政府からも目をつけられたという、曰く付きの一本です(その為、映画冒頭では米空軍による「この物語は現実ではあり得ない」という注釈が入っている)。ストーリーは米軍将校による嘘の蜂起による、核戦争の危機。登場する人物のほとんどが異常者で、核戦争の危機にも関わらずとんでもない行動を繰り広げまくる登場人物たちの姿は、思わず爆笑してしまうこと請け合い。20世紀を代表する映画監督キューブリックが仕掛けた、戦争についての知的な暗喩もさることながら、独特の素っ頓狂な展開は他の映画では味わえません。核弾頭にカーボーイのように跨り、核の大爆破を迎える衝撃のラストは大注目。名優ピーター・セラーズが演じるマッド・サイエンティスト“ストレンジラブ博士”の狂気溢れる演技も見所。

 

■吸血鬼ゴケミドロ

▼公開年:1968年▼製作国:日本▼監督:佐藤肇

ゴジラやウルトラマン等、特撮マン円谷英二仕込みの子供向けSF・特撮作品が流行っていた60年代において、ハードSF小説の如き設定で展開する海外でも評価が高い松竹映画のSFスリラー。「野球」「潜水艦」「擬態系の侵略モノ」が題材になった映画はつと面白い映画が多い、とはウンチクたれ蔵こと僕がよく言う言葉であり、この映画に置いても例外ではないです。そう、この映画、邦画において初めて“人類に擬態した宇宙人が人類を襲う”という題材を取り上げた映画なのです。舞台は小型飛行機と、墜落した飛行機の周辺が中心となっており、擬態エイリアン“ゴケミドロ”の魔の手から逃れる為に、疑心暗鬼になってしまう10人あまりの乗客たち。あのタランティーノの自身の監督作品『キル・ビル Vol.1』の中でもオマージュを捧げた、ドギツイ真っ赤っかの空を飛ぶ飛行機の特撮の印象的な一作。もちろん、面白さも折り紙つき。ちなみに、公開当時の併映作品は現在の美輪明宏こと丸山明宏主演・三島由紀夫原作戯曲の映画化の『黒蜥蜴』。すごい濃いラインナップだこと。

↓『キル・ビル』での実際のオマージュ場面(もろパクリ!)↓

 

■県警対組織暴力

▼公開年:1975年▼製作国:日本▼監督:深作欣二

『仁義なき戦い』の広能昌三役等、「ヤクザといえばこの人!」とばかりに70年代にヤクザ役をやっていた菅原文太。そんな彼が初めて刑事役に挑戦したのが本作。とはいえ、ヤクザとはバリバリ癒着をしている悪徳警官で、時には取り調べでチンピラをボコボコにするなどやりたい邦題。『トレーニング・デイ』のデンゼル・ワシントンでさえ霞んでしまう悪徳警官っぷりが、こちらも同じく『仁義なき戦い』の深作欣二監督により映画化されたのが本作。揺れに揺れる臨場感溢れるカメラワークに、ビミョーにダサいけどやたら印象に残るサントラ等、雰囲気は思いっきり『仁義なき戦い』であるものの、菅原文太のエネルギッシュな演技と、こちらも大ハッスルしている相手のヤクザ役の松方弘樹の演技合戦が見所の本作。前述したチンピラをボコボコにして、挙句全裸にさせて自供させる取り調べシーンや、松方弘樹が劇中中盤で見せる“THEヤクザのセックス”と言わんばかりの「死んじゃう〜!」「死ねぇぇぇ!」(その直後に酒を女性に吹き付ける!)というあり得ないけど無ッ茶苦茶エロい淫行場面も見所。マグロ釣り俳優・松方弘樹が、女をマグロにしている衝撃の場面です。

 

■SF/ボディ・スナッチャー

▼公開年:1978年▼製作国:アメリカ▼監督:フィリップ・カウフマン▼原題:Invasion of the Body Snatchers

前述『吸血鬼ゴケミドロ』でも触れている通り、「野球」「潜水艦」「擬態系SF」は面白い映画が多いという法則。これは擬態系侵略モノSFの中でも随一の出来を誇るSFスリラーです。原作はSF作家ジャック・フィニィによる傑作小説「盗まれた街」。本作以前にも映画化もされている“スナッチャー系SFの元祖”の2度目の映画化となります。主演は『24』のジャック・バウアーで知られるキーファー・サザーランドの親父にして、最近では数々のおじいちゃん役をこなしているドナルド・サザーランド。この映画で初めて書かれたのが宇宙人による人類となるまでの擬態シーン。これがヒジョーに気持ち悪いのが特徴で、不気味な音楽と相まって物凄い怖い場面になっています。後年、気持ち悪い擬態シーンで、現在でもカルト的人気になっている、80’sの傑作SF映画『遊星からの物体X』に勝るとも劣らない擬態シーンは必見です。また、後味が悪すぎる最悪の結末を迎えるラストは、背筋が凍るような恐ろしさ。ちなみに、この映画、人間の顔をした犬…所謂“人面犬”が登場する映画でもあり、日本ではこの映画により「人面犬のおっさん」という都市伝説が生まれた、というホントっぽい噂もあるとか。その場面もかな〜り不気味。背筋が凍るような恐怖を味わいたい人は必見の映画です。ちなみに監督は、インディ・ジョーンズシリーズ1作目『レイダース/失われたアーク』の原案(初期稿)を担当したフィリップ・カウフマン。1993年に日米貿易摩擦のテーマにした物凄いクソ映画『ライジング・サン』を手がけた後に、キャリアが思いっきり下降路線になったちょっと人生設計がおかしい監督でありますが、そんなクソ映画メーカーの一人の光り輝く名作です。

↓問題のラスト。どういう結末かは実際に観てご確認を(顔芸)↓

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■アギーレ/神の怒り

▼公開年:1973年▼製作国:西ドイツ▼監督:ヴェルナー・ヘルツォーク▼原題:Aguirre, der Zorn Gottes

ベルリンの壁が崩壊する遥か前に西ドイツで作られた歴史映画。“歴史映画”とは言うものの、この映画の見所は現在では絶対に無理な、どう観ても常軌を逸した危険ロケ映像。この映画を観たら、「ああ、イッテQなんて大したことねえんだな」と思ってしまうこと間違いなし。まずオープニングから「これどうやって撮ってんだ…」と絶句してしまうような登山隊の様子で、早々に度肝をを抜かされてしまいます。続くあまりにも危険な映像の数々と、役者陣の演技ではない疲労困憊した顔(というか今にもブチギレそうな顔)でハラハラさせられます。とはいえ、内容は真面目そのもので、主人公を演じるドイツを代表する怪優クラウス・キンスキーの狂気が溢れる演技は必見。この映画の撮影時に、クラウスがブチギレて銃を乱射しエキストラの手を吹っ飛ばした、という衝撃のエピソードも残る本作。そんな壮絶すぎる撮影現場エピソードを調べてからみるのも楽しい一作。ちなみに監督は現在ではハリウッドでも活躍するヴェルナー・ヘルツォーク。こんなファンキーな映画を撮った監督も、歳をとって丸くなり、最近ではトム・クルーズの『アウトロー』で、俳優として不気味な黒幕役を楽しそうに演じていました。

 

■フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ

▼公開年:1966年▼製作国:日本・アメリカ▼監督:本多猪四郎▼英題:War of the Gargantuas

1966年。実はこの年にあの有名なウルトラマンが誕生するなど、「特撮=ファミリーもの」という図式が決定してしまう年であったのです。特撮映画の代名詞、ゴジラシリーズも当時、『怪獣大戦争』など、かなり家族層を意識した内容に転換していった時期でもありました。そんな1966年に、ゴジラの一作目を手がけた本多猪四郎監督の指揮により誕生したのがこの映画。この映画に登場する「サンダ」と「ガイラ」、実はこの2匹兄弟なのです。そしてコイツら特撮怪獣のクセして妙にリアリティがある身長でもあります。1954年に公開された『ゴジラ』は身長がおよそ50メートルとのことで、そんな巨大生物が都市部を破壊して廻るという、カタルシスは熱狂を持って迎えられましたが、この映画の怪獣2匹、なんと20メートルちょっと、下手したらそれよりも小さい。なので、普通に「巨人」ってくらいのサイズである。しかも2匹とも怪獣らしくノシノシ歩くのかと思いきや、めっちゃ走り回る。しかも弟怪獣のガイラの方は、そればかりか食人癖もあり、泣き叫ぶおばちゃんを捕まえては頭から搔っ食らうのです。実はこの『サンダ対ガイラ』ですが、そんな場面の数々もあり、この時に観たキッズたちの「怖かったよ〜」とばかりの“トラウマ映画”として認識されているとのこと。そりゃそうだ、今観ても怖いもん。内容は平和を愛する“サンダ”と凶暴な食人怪獣“ガイラ”の大規模な兄弟喧嘩。ガイラが羽田空港に現れて暴れまくる場面は、怖さと大迫力のツインコンボで必見です。そういえば、井筒監督のヤンキー映画『岸和田少年愚連隊』でサンダとガイラなる兄弟ヤンキーがいたと思うのですが、おそらくこの映画が元ネタだと思われます。

 

■トラ・トラ・トラ! 

▼公開年:1970年製作国:アメリカ・日本▼監督:リチャード・フライシャー/舛田利雄/深作欣二▼原題:Tora! Tora! Tora!

第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦を日英独それぞれの視点から描き高い評価を受けて大ヒットを記録した『史上最大の作戦』。そのスタッフが再集結して、今度は日本軍による真珠湾襲撃作戦を日米双方の視点から描いた映画が本作。昨年、本物の戦闘機を飛ばして大規模な撮影をしたことで話題になった『ダンケルク』の遥か45年も前に、本物の戦闘機を飛ばして真珠湾攻撃を再現してみせたこの映画ですが、今観ても遜色がないほどの大迫力の襲撃シーンが見所です。尚、本作の元々の監督はあの黒澤明であったという事実は、映画ファンにはよく知られたハナシ。何でも巨匠・黒澤明はこの映画に意欲マンマンで、他監督との共作という制作体制をガン無視して、ワンマン体制で掌握しようとして大失敗、挙句気が触れて降板してしまったという、邦画史上の天才らしからぬトホホエピソードが残ってしまっており、降板(というより、実質クビ)の後、気を病んで自殺未遂を引き起こしてしまったそうです。その辺のエピソードをまとめた文藝春秋によるメイキングルポ「黒澤明vs.ハリウッド―『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて」はとても面白いので、鑑賞後にしっぽりと読むのに必見です。黒澤明という監督の人間味と狂人っぷりが十二分に詰まった傑作小説です。私、戸野ハジメが愛読する一冊です。並みの犯罪小説よりも遥かにスリリング。

 

■ライフ・オブ・ブライアン 

▼公開年:1979年製作国:イギリス▼監督:テリー・ジョーンズ▼原題:Monty Python’s Life of Brian

イギリスのドリフターズ的な存在であるコント集団「モンティ・パイソン」。オックスフォード大学、ケンブリッジ大学と二大インテリ大学出身のコメディアンが集まった世界でも有数のインテリコメディ集団です。そんな彼らの、宗教を題材とした傑作コメディ。政府の体制や、一般市民の滑稽さを戯画化したコメディ番組「空飛ぶモンティ・パイソン(Monty Python’s Flying Circus)」で人気を博した彼らの、入魂のコメディ映画の2作目の作品で、前作『モンティ・パイソン・アンド・ザ・ホーリー・グレイル』ではアーサー王伝説を茶化したコメディを作り上げた彼らが、満を辞して発表した題材は何と“イエス・キリスト”と“聖書”。主人公はキリストと“同時期”に生まれた青年ブライアン。彼はふとしたことから(そして、不本意ながら)、宗教家・革命家として祭り上げられて、悲劇の人生を歩むことになります。ストーリーだけだと、さも悲劇のおハナシで救いようのない様子であるものの、そこはモンティ・パイソン、溢れんばかりのパロディと知的なギャグでまとめてしまったのです。当然ながら、信心が深い人々に猛抗議を受けて上映禁止の国なども出してしまうなど、世界中で賛否が別れたという本作。ギャグとシリアスが紙一重とは良く言ったもので、モンティ・パイソン最大の問題作という世評があるのも頷ける内容です。とはいえ、肝心の内容もとっても面白くて、「良くこんなハッタリが思いつくな〜」と度々関心しつつクスッと笑ってしまう上級の作品になっています。ラストに流れるメンバーのエリック・アイドルが作曲した「Always Look on the Bright Side of Life」は、過去の評価に反して現在ではイギリスを代表する名曲として君臨しており、2012年のロンドン・オリンピックでも演奏されたほど。上級なコメディ映画とは、まさにこの映画の為にあります。もしかしたら、この映画は誕生するのが早すぎたのかもしれませんね。

↓突然のラスト。何故か感動してしまうのが悔しい↓

↓さらに、実際のロンドン五輪での場面↓

Monty Python's Eric Idle – London 2012 Performance | Music Monday

 

以上、古い映画の面白い映画まとめでした。これからも、あなたの映画生活を我々が一丸にサポートしていきます。それでは次回。

BANANA SCOOTER’Sの用心棒兼コンポーザー。元民放テレビ局AD。自称・関東イチ映画とテクノ・ミュージックを愛する男。ダイエット中。またサブカルチャーへの造詣もかなりのもんです。趣味はディスクユニオンでポンコツCDを購入すること、どうでも良いことに対しての長い作文作成。

故にそんなブログを書くと思います。

しょうもない内容の記事が多いですが、本人曰く「至って真面目」に“しょうもない記事”を書いているとのことです。

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