普通の映画じゃ見れない「ドキュメンタリー映画」の世界

コラム

皆さん、日曜日の夜は如何お過ごしでしょうか。

流浪のテレビ制作会社勤務のシンセサイザー奏者トノハジメです。

さて、今日まとめるのは久々の映画レビューです。

 

皆さん、ドキュメンタリー映画はご覧になったことがありますか?実はドキュメンタリー映画には名作が山ほど眠っているのですが、知名度は意外とないのが現状なワケです。ということでもう少しでくるゴールデンウィークの為、暇つぶしに最適なドキュメンタリー映画を3本紹介致します。

 

■『アクト・オブ・キリング』

ドイツ映画の巨匠にして、2012年のアクション映画『アウトロー』でトム・クルーズと共演し強烈の印象を残したヴェルナー・ヘルツォークが、プロデューサーとして指揮をしたドキュメンタリー映画。『イッテQ』でおなじみのデヴィ夫人のダンナとしても知られるインドネシアのスカルノ大統領が、軍事クーデターに遭い失脚した際に発生した大虐殺「9・30事件」を題材にしたなかなかハードな内容。実はこの映画、「9・30事件」の発端や影響をそのまま追ったフツーのドキュメンタリーとは一線を画する内容になっています。というのもこの映画、「9・30事件」の中心になった軍人たちに直接インタビューを敢行するというだけでなく、「どのような拷問をしたか」「どのように殺したのか」という同時の所作を満遍なく聞き、挙げ句の果てにそれらを実際に映画仕立てでホンモノのように演じてもらうという内容なのです。事件の当事者たちは「The Act of Killing(殺しの演技)」を、最初は嬉しそうに演じていきますが、自分たちの行ったあまりにも凄惨な行動に困惑し懺悔しまくるという、強烈な因果応報映画なのです。一度観たら、その衝撃に愕然としてしまうでしょう。


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■『ROOM237』

今からおよそ40年も前、1980年に大ヒットをしたスタンリー・キューブリックによるホラー映画『シャイニング』を、映画解説者たちがあらゆる方面から「考察」をした非公式のドキュメンタリー映画。『シャイニング』といえば、ジャック・ニコルソンや奥さん役のシェリー・デュバルによる「顔芸」が有名な映画ですが、謎が謎を呼ぶような暗喩めいたストーリー展開も特徴で、解説者たちは目をつけたのはその謎への「考察」。一見こじ付けがましい部分から、フムフムと思わせる考察たちは、それぞれ中々の興味深さ。興味深いエピソードは「『シャイニング』原作者のスティーブン・キングが激怒」したという映画内への一場面への考察。実はこの映画の原作を書いたスティーブン・キングが、キューブリックが映画化した『シャイニング』の内容を「過剰に改変された!」と激怒してしまったのはつと有名な話。なんとキューブリックは映画の制作中から、敢えてスティーブン・キングを挑発にかかったというのです。他にもキューブリックにまつわる都市伝説として知られる「宇宙船アポロの月面着陸は彼が撮影した」というエピソードを、映画の中で暗示していたという内容など、サブカルファンが悶絶してしまうようなエピソードの数々。まさに必見の一作です。

※ちなみにタイトル『ROOM237』とは映画に出てくる呪われたと噂されるとある部屋のこと。


ROOM237 [ ビル・ブレイクモア ]

 

■『ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録』

1979年に発表され、その難解な作風から賛否両論を巻き起こし、果ては監督・プロデューサーのフランシス・フォード・コッポラを破産させた戦争大作『地獄の黙示録』の舞台裏に迫ったメイキング・ドキュメンタリー。見れば見るほど困惑する映画はどういう経緯で作られたか、という内容でありますが、舞台裏はとにかく無茶苦茶。映画作家としての意地で撮影しまくるコッポラ、どう見てもついていけていないスタッフの皆さん、そして薬物でヘロヘロになった俳優達など、『地獄の黙示録』の映画の内容に恥じないかのような絶望的な内容は必見。一度鑑賞したら「よくこの映画、完成したな」と思わず呟いてしまうこと請け合い。中でも必見なのは撮影当時、ベロベロのジャンキーであった名優デニス・ホッパーに対して「君がちゃんとしなきゃ…」と激怒する一場面。監督に激怒されながら、ラリって「でへへ〜」と笑っているデニス・ホッパーには戦慄してしまいます。思わず「この時代に生まれてなくて良かった」と思ってしまう一場面です。


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■『ジム&アンディ』

強烈な顔芸を得意とするハリウッドのコメディ俳優ジム・キャリー。『マスク』や『ブルース・オールマイティー』など、底抜けにハイテンションなキャラクターと過剰すぎる演技で90年代・00年代を代表するコメディ俳優となりました。しかし、彼はその裏で様々な感動系のドラマ映画にも出演していることは正直あまり知られてはいません。彼が1999年に出演した『マン・オン・ザ・ムーン』はジム・キャリーの俳優キャリア上で最も評価を受けた映画で、実在の人物「アンディ・カウフマン」としての演技は特に秀逸です。このドキュメンタリーはそんな『マン・オン・ザ・ムーン』の舞台裏と、何と現在では少しキャリア停滞気味なジム・キャリーが自分自身の俳優人生を語るという、少しほろ苦い内容。何がすごいかというと、『マン・オン・ザ・ムーン』撮影時のジム・キャリーの撮影現場での横暴とも言える態度の数々。実はこの映画の撮影中、あまりにも「アンディ・カウフマン」という人物にのめり込みすぎてしまい、アンディ自身が存命時に引き起こしたトラブルを諸々再現してしまったからなのです。困惑して頭を抱える『アマデウス』などで知られる巨匠ミロス・フォアマン、ジム・キャリーを本気で殴りにかかるプロレスラーなど、とにかく強烈な場面の数々。必見です。


マン・オン・ザ・ムーン オリジナル・サウンドトラック [ (オリジナル・サウンドトラック) ]

■『FAKE』

地下鉄サリン事件後のオウム真理教に迫ったドキュメンタリー映画『A』で知られる森達也監督による、あの佐村河内守に迫ったドキュメンタリー映画。「結局耳は聞こえたの?聞こえなかったの?」という単純な疑問を、本人の気持ちを踏み躙るかのように迫る、言わば死体蹴りのような映画ではありますが、ただ否定するだけでないという点がこの映画の特徴。当然ながら佐村河内本人の意見としては難聴についての結論が出るわけもありませんが、思わず最後まで見てしまうことは請け合い。必見です。


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ゴールデン・ウィークも近づいて参りましたが、『ブラック・パンサー』なんざ観に行くよりも、家でドキュメンタリー映画などいかがでしょうか?

それではまた来週。

BANANA SCOOTER’Sの用心棒兼コンポーザー。元民放テレビ局AD。自称・関東イチ映画とテクノ・ミュージックを愛する男。ダイエット中。またサブカルチャーへの造詣もかなりのもんです。趣味はディスクユニオンでポンコツCDを購入すること、どうでも良いことに対しての長い作文作成。

故にそんなブログを書くと思います。

しょうもない内容の記事が多いですが、本人曰く「至って真面目」に“しょうもない記事”を書いているとのことです。

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