【映画レビュー】映画評論〜アンタのナマコに塩塗り込むわよ!〜第15回:一本気のある人間は美しい!特集

コラム

映画評論家のおすぎむら昆よ!

おぼおぼおぼ!

緊急事態宣言も間も無く一ヶ月ですが、やっぱりヒマですよね。

みんなで手を取り合って頑張りましょう!

ってことで日本人の美徳でもある「一本気」がテーマの映画を紹介するわ!

「レッド・ブロンクス」【65/100点】

80年代から90年代にかけて、数度のハリウッド挑戦を行っていたジャッキーが、ついに全米1位の大ヒットというアジア人初の快挙を成し遂げた、アメリカが舞台の『ポリス・ストーリー』。

ストーリーもジャッキー映画…というより90年代アクション映画定番の「ふとしたキッカケで巨悪と立ち向かう」という王道ストーリーで、当時40歳とは思えない年齢的を感じさせないキレキレのスタントアクションを繰り広げる。

ジャッキー映画では珍しく若干の残虐シーンもありつつも、基本的には呑気な雰囲気の中繰り広げられる壮絶アクションの連続。まさにジャッキー映画。

アジア公開版と国際版の2種類があり、大きな違いは音楽。アジア公開版は本作以降ジャッキー映画のサントラをよく手掛けているネイサン・ウォン、国際版はデヴィッド・ボウイやフィル・コリンズなどのサポートキーボーディストとして知られるJ・ピーター・ロビンソンが手掛けている。

アジア公開版はジャッキー本人の以降が色濃く反映されているのか、音楽だけではなく本編の編集自体も若干異なることもあって、全く異なる雰囲気になっている。

ちなみにワタクシは乱暴な編集で、アクションシーンの度にハードロックがガンガンにかかり、尚且つ無茶苦茶テンポが良いアジア公開版が好き。

「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」【60/100点】

反体制映画の巨匠としても知られる若松孝二監督が手掛けた、“あさま山荘占拠事件”など学生を中心とした極左テロ組織「連合赤軍」の足跡を、みっちりと3時間強の尺で描写した作品。
巷では“低予算”とされているが、実際のところ製作費は2億円と一般の映画並み、切迫感と暴力に満ちた雰囲気が息苦しいのがこの作品の特徴。

勿論、作品と当人たちの思想感には到底受け入れられるモノじゃないが、テロリズムや集団暴力が何故発生するのかが非常に濃厚に描写されており、ちょっとした人心掌握のお勉強になる映画だったりもする。

ちなみに音楽は元ソニック・ユースのジム・オルーク。グラミー賞も受賞し、あの名作コメディ『スクール・オブ・ロック』のサントラにも参加している事でも有名なジムだけあってか、ところどころで聞こえるポストパンクも雰囲気がピッタリ。


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「シックス・デイ」【45/100点】

ただでさえ暑苦しい風体のシュワちゃんが、自分自身のクローンを巡る攻防に巻き込まれる一般男性(嘘つけ!)を演じるという、色々と無茶がすぎるSFアクション。

コメディ要素一切ないのに。 監督は編集マン出身で、本作の前に『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』の監督を務めたロジャー・スポティスウッド。

そもそもシュワちゃんの暑苦しいクローンが出来た理由も「クローンの制作社長が殺されたのを隠蔽する為」という、アホが作ったケータイ小説とかでありそうな頭の悪い理由がキッカケで、当のシュワちゃんは「家族を取り戻すんだ!」と躍起になって巨悪(?)組織であるクローン会社の刺客たちに立ち向かう。

一般男性(嘘つけ!)という設定と言いつつも、シュワちゃん映画でおなじみの重火器ゴリ押し等のパワー系マッチョという設定は相変わらずだが、心臓手術の影響もあってか出演前作の『エンド・オブ・デイズ』に以降の、良くも悪くも特徴になってしまった愚鈍に見える雰囲気がムンムンと漂う。

まあ当時においてもアラフィフだったから仕方ない部分もあるけど。

で、ストーリーにおいても大して盛り上がりもせず展開をしていく。砂漠の中心にある真っすぐの田舎道のようである。 終始、テンションは「ふ~ん」って感じ。

ということで、本人の演技力に対し比較的映画の構成が良かったシュワちゃんの映画群の中でも、『バットマン&ロビン』『コラテラル・ダメージ』と肩を並べるであろう出来の悪さとなっている。

※あ、この3作はそういえば連作じゃないか!

唯一良い部分といえば無駄にカッコいいサントラで、手掛けたのはプログレバンド「イエス」のトレヴァー・ラビン。

地味な展開の作風に相反するかのように、音楽だけはやたらド派手で、特にラストにおいてはほぼほぼ音楽のおかげでテンションが上がる。

即ち全体的に音楽で地味な作風(とシュワちゃんの暑苦しさ)を誤魔化しているのだ。 まさにステロイドのような音楽! 音楽の重要さが良く分かる映画。

そういえばしれっと『エクスペンタブルズ』のテリー・クルーズが出演している。

「岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説」【70/100点】

日本が誇る強面俳優竹内力。

元々はトレンディ路線の正統派イケメン俳優だった、という過去を微塵も感じさせない多種多様な出演作は、役柄・内容共に非常に幅広い。

中でもかなり強烈に印象に残るのが、この『カオルちゃん最強伝説』。

なんと竹内力、この作品で15歳のバンカラ高校生を演じている。

念の為書いておくが、竹内力はこの当時でも30歳半ば。今と比べても「若干若々しいかな…」というくらいで、大して印象は変わらない。

なのにも関わらず、一切高校生に寄せてない過剰な演技は脱帽を通り越しており、「んぇ~~?」「あぅ~~~?」など、ギリ健…いや、まともな演技をしていないながら強烈に印象に残る怪演、親父臭すぎるタンの吐き方など、このキャラの見事さだけでも1時間は語れる。

当然とも言えるが、劇中でも「なんや、あのおっさん…えっ?高校生やと!?」という、ものすごくベタなボケが連発。

分かってはいるけど笑ってしまう。

共演のライバル高校生役も田口トモロヲ。当然だけど、明らかに確信犯のキャスティングである。

タイトルの通り、井筒和幸監督の『岸和田少年愚連隊』の続編的な立ち位置だが、続編的な繋がりは一切ない所謂外伝もの。

もちろん内容は全ッ然別物で、ヤンキー物ってくらいしか合致点は無し。ここまで振り切ったシリーズの続編を見たことがない。

いずれにせよ、笑いが強要されているようなコメディとは一線を画す、ワタクシ的には何度観ても面白い秀逸コメディ。

当然ながら『カオルちゃんシリーズ』として、この作品を除いて7作の続編が生まれることになった。その間、竹内力はずっと高校生を演じ、シリーズ中期で40歳を迎えた。そのエピソードだけでも爆笑モンである。

関係ないですが、竹内力ってサッカーの永島昭浩にソックリですよね?

「ミスター・ベースボール」【70/100点】

日米の異文化交流を取り上げた作品で、脚本は後に『ハンガー・ゲーム』や『オーシャンズ8』の監督となるゲイリー・ロス。日米貿易摩擦真っただ中であった90年代の世相を反映した、ある意味”銃撃戦シーンが野球に変わった”『ブラック・レイン』とも言える作品。

とはいえ、『ブラック・レイン』ほど内容が小難しい映画ではなく、色々考えなければ単純に日本を舞台とした結構本格的なスポ根野球モノである。

出資会社としてユニバーサルの他、電通がガッツリ絡んでいる為、実質日米合作となった映画だったりもする。

内容は所謂“助っ人外国人”選手の活躍を描いたストーリー。主人公の所属球団は東京の巨人と思いきや、なんとドアラやシャオロンなどマスコットキャラを置く前の中日ドラゴンズ。当然舞台は名古屋。

なんと前代未聞ともいえるセリーグ全球団への撮影協力を要請したことでも知られる一作である。

また、キャストもそれなりに豪華。日本の文化に戸惑う元NYヤンキースの剛腕ファーストのジャック役は名優トム・セレック。相棒的な立ち位置のマックス(ポジションはライト)役は『24』のデニス・ヘイスバート。この人『メジャーリーグ』にも出てたな…

日本の俳優勢もなかなかで、セカンドの山下役は豊原功補、控えの選手で『相棒』で売れる前の神保悟志が出演している。

そして監督の内山は高倉健。役作りの為、当時ドラゴンズ監督(1回目)であった星野仙一に協力を依頼。「ID野球的指導」「巨人への過激な対抗心」、そして「苛烈な怒号」と、ほとんどまんまな星野仙一的監督を熱演。ラストの試合の選手の褒め方とか、どこをどう見ても星野仙一。

※ちなみに主人公ジャックの役柄は元阪神のランディ・バースがモデルらしい。

ちなみにこの協力関係により、高倉健と星野仙一は仲良しになったというほんわかするお話もある。

野球シーンでもかなりチカラが入っており、同時期の『メジャーリーグ』シリーズ並のワクワクドキドキ感がある、迫力のある場面になっている。特に終盤の、観客エキストラ10万人を投入したという巨人戦シーンは必見。

ブルーレイや配信が普及していないのが残念な限りの隠れた佳作。ここまで埋もれているのは、おそらく電〇絡みっぽいけど…。

そういえば、この映画の公開は1992年で、野茂がメジャーに挑戦するちょっと前。そういう意味も含め、当時の日本野球界の様子がよくわかる貴重な映画でもある。


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映画評論「アンタのナマコに塩塗り込むわよ!」連載中!
好きな映画のジャンルはカルト系から一般エンタメ映画まで様々。
自身の男性器を素手で引き千切っているゲイなりの斜に構えた観点で映画をレビューして興奮している変態。
夢は帝国陸軍士官を主人公にしたヒッチコック風のサスペンス映画を監督すること。

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