【映画レビュー】元テレビ番組スタッフ目線で観た『 #カメラを止めるな !』

コラム

こんにちわ、ミスター断捨離トノハジメです。

さて、今年流行った映画と言えばやはり『カメラを止めるな!』。なんと37分間にも及ぶ超長回しワンカット撮影が話題になり、またその物語構成の見事さで高い評価を受けたのは記憶に新しいですよね。さらに、先日発表されたユーキャンの「新語・流行語大賞」では、この映画を指す“カメ止め”の言葉がノミネートされるなど、多方面で話題になりました。

この映画が何より面白いのが、冒頭から37分の長回しだけでなく、「そもそも、なぜ1カットなのか?」ということが解明していくその後の場面の数々。実はこれが見ものなのです。映画のキャッチコピー「最後まで席を立つな。この映画は二度はじまる。」はという言葉は、あながち嘘ではありません。(詳しくは後述)

人気芸能人の皆さんもこぞって大絶賛。でもこの評価、「芸能人が絶賛してるから」とか所謂“ヨイショ”系の発言と思われるじゃないですか。いや、本当にそんなことない。そんなのが無くても、自信を持ってオススメ出来るのがこの映画『カメラを止めるな!』。

その2018年でイチバン(?)の超話題作『カメラを止めるな!』が、今日12月5日にいよいよBD・DVDが発売。タイミングも良いので、このサイトのアップ者全員が得意技としている世間のブームへの便乗精神で本年度の超話題作『カメラを止めるな!』のレビューを上げていきます。

『カメラを止めるな』のあらすじ

とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画の撮影をしていたが、そこへ本物のゾンビが襲来。ディレクターの日暮は大喜びで撮影を続けるが、撮影隊の面々は次々とゾンビ化していき……。

※あらすじは「映画.com」より転載

構成の“斬新さ”と華麗なる展開

この映画を語る際に外せないのが、冒頭から実に37分にもなる長尺1カット長回し。

※「長回し」→撮影をストップしないで、長時間カットを割らない撮影技法のこと。最近の有名映画だと、『レヴェナント』での冒頭の戦闘シーンや、ボクシング映画『クリード』のラスト2ラウンドノックアウトまでの場面が分かりやすい。現場のカメラマン曰く「カメラマンとしての腕と、制作スタッフの腕が試される技術」と良く言われている。

ただ、“長回し”とはいえ、「うわあアングルがすごいな」とか「こんな見事な演技を長時間失敗しないですごい」とか、所謂「技術&撮影テクにバンザイ!」的な映画かと言うと、この『カメラを止めるな!』は正直そういうワケではない。むしろ逆。

実際、冒頭37分間に及ぶ長回し、それだけ単体でもし見せられたとしたら、見るに絶えないくらいグダグダで、尚且つ撮影なども含めて様々な「失敗」をしているのです。「金返せ!」と思ってしまうレベル。観に行った人も「冒頭の長回しが意味不明すぎて帰ろうと思った」と言うくらい。ぶっちゃけ僕も「これ何見せられてるんだ…」と思いましたし。

しかし、映画の始まりはこの長回しが終わってから始まる。本項の冒頭でも書いた通り、この映画『カメラを止めるな!』は「二度始まる」。実はこの映画、そもそもで「ゾンビ映画」というジャンルであること自体が建前上なのです。冒頭37分の長回しが終わってから始まるのは、『ヘイル・シーザー!』などのような、所謂“撮影内幕モノ”の映画。

これがすんげえ面白いのです。「撮影に臨むまでこんな苦労があった」「段取りがしょうもないのはこういう理由があった」とか、37分の長回しの“グダグダ”の謎が次々と紐解かれていく様子はまさに圧巻。つまり冒頭37分間の長回し、実は全てが伏線になっているのです。これに気が付いた時、誰もが「うわ!やられた!」と思ってしまうでしょう。

まさしく構成の妙。なので、これから観る方は冒頭37分で「期待してたのとちがう…」となってもちょっと待ってください。だってもしそこで鑑賞を止めてしまったら、まだ映画始まってないような部分で鑑賞を止めたに等しいので。

“撮影スタッフ”あるある

この映画、SNS上で映画の存在を知ったサブカルマニアたちのおかげで、口コミにより作品名が浸透していったらしいんですが、SNSボーイズ&ガールズだけでなく映画関係者やテレビ関係者など、所謂エンタメ系の“業界人”ウケが頗る良い。

一般の方で一度観た方は、「なんでこんなことをしてるんだろう?」と疑問に思う場面がかなりあると思います。

でも、全て起こりうる話なのです。僕の経験則からすると。

さて、思い出してほしいのが筆者自身のこと。以前より本サイトにて紹介している通り、僕は“元”民放ゴールデン帯番組の制作スタッフ。この映画内の劇中番組内の“失敗”“段取りの悪さ”などの数々が痛いほど良く分かるのです。というか完全なる“映像業界あるある”なのです。

映像制作において、この映画のような無茶な状況に追い込まれることは実に良くある話。映像制作とは、観るだけならば単純なモノですが、実際の舞台裏は無茶と理不尽と妥協だらけ。ましてこの映画のような“生放送”みたいな番組なら尚更です。本当にこの点が良く出来ているのです。だからこそエンタメ業界の人間には評価が高いのだと思います。だって、共感してしまいますもん。間違いない。

もちろん、「じゃあ業界人向けのマニアックな映画なんですか?」というと、そういうワケではない。その塩梅がこの映画、ヒジョーにお上手。

“演者”あるある

そうだ。

“あるある”の話であればキャスト陣に設定などにも、「うわあ、こういう人居るわ〜」的な設定の人もチラホラ。制作業務的に思うあるあるは、登場してくるキャラクターたちにも。

例えば、劇中劇のヒロインを演じている秋山ゆずきちゃんが演じている、「私はオッケーなんですけど、事務所がどう言うかな?」みたいなアイドル系のタレント・女優。本当にこういう人居るから、それこそ業界人なら、この場面に大爆笑した場面なんじゃないでしょうか。いや、冗談抜きで本当に居るんです、こういう「私は大丈夫だけど…」みたいな子。「嘘つけ!本当はお前がやりたくないだけだろ!」です。マジ分かるわ。

また、真魚ちゃんが演じている常時食い気味な女性AD…居るわ〜。さすがに歳上に「おじさん!おばさん!」は言うADは居ませんが、それでもかなり共感してしまう。居るんだよな、ああいう「お前演出かよ」ってグイグイ口出してる女(←これ重要)の子。スッゲェ分かる。

まとめ

この映画、実質の製作費は300万円ととても低予算の映画らしい。

※一般のメジャーどころの映画だと、大体一本5000万円〜2億円くらいが相場。テレビ番組は1回の放送で大体500万円〜2000万円。

300万円という低予算にも関わらず、現状の興行収入は30億円。その利益率およそ1000倍という、まるで灘高の倍率みたいな記録的大ヒット。一時期盗作騒動が発生しそうになったものの、この映画の圧倒的なヒットにより、若干の遺恨を残しつつも無事鎮火。

映画を監督した上田慎一郎さんのハードルもベルリンの壁の如く上がりまくってしまっていますが、やはり演出の妙。次回作がとても気になります。


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BANANA SCOOTER’Sの用心棒兼コンポーザー。元民放テレビ局AD。自称・関東イチ映画とテクノ・ミュージックを愛する男。ダイエット中。またサブカルチャーへの造詣もかなりのもんです。趣味はディスクユニオンでポンコツCDを購入すること、どうでも良いことに対しての長い作文作成。

故にそんなブログを書くと思います。

しょうもない内容の記事が多いですが、本人曰く「至って真面目」に“しょうもない記事”を書いているとのことです。

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