【映画レビュー】映画評論〜アンタのナマコに塩塗り込むわよ!〜第16回:通好みの映画特集

コラム

映画評論家のおすぎむら昆よ!

おッス!(おすぎむらだけに)

今回は大ヒットはしてないけど、映画ファンに一定の人気を誇る映画を紹介するわ!

「ニューヨーク1997」【85/100点】

ワタクシが大好きなゲーム『METAL GEAR』シリーズの元ネタとなったことで有名な、近未来が舞台のSFバイオレンスアクション。

監督は昨年も話題になったホラー映画『ハロウィン』のクリエイター、B級映画界の天才ジョン・カーペンター。

まずストーリーの掴みからかなりグッとくる内容で、舞台は検挙率400%(!?)が超えてしまって通常の刑務所が機能しなくなったことから、マンハッタン島全体が刑務所に…という、とんでもない大風呂敷をオープニングから広げてしまう大胆さ。

しかもこの設定、CG風の簡単なアニメとナレーションだけという、スケールデカすぎな割にあっさりと紹介される。このクールな説明カットは当時、本作以降のB級SFで模倣されまくったりもした。

何と言っても秀逸なのは、今では名バイプレーヤーとして様々な作品に顔を出しているカート・ラッセルが演じる主人公スネーク・プリスケン。

近未来なのに何故か黒アイパッチ、ニヒルな性格で無愛想、ヤバくなったら一目散に逃げる等、アクション映画としてはあるまじき脅威のアンチヒーローっぷりは、静かなキャラなのに強烈。

また、例に漏れずカーペンター本人が手がけたBGMも大変クールで、この映画の独特な雰囲気に一役買っている。

終末系SFの先駆けとも言え、同時期の『マッドマックス』と共に、未だに新規のファンが絶えないアポカリプス系映画の人気作。

ちなみに、1996年にはカーペンターご本人によって、この映画の7倍の予算をかけた続編『エスケープ・フロム・L.A.』が制作された。主演は勿論カート・ラッセル。予算7倍の割にほとんど同じ展開、雰囲気もほぼ同じ、ちゃんと金かけてるのが分かるのに何故かチープという、とてつもない魅力に溢れた一作となった。

[↓続編の予告編↓]

「最後の誘惑」【85/100点】

『タクシー・ドライバー』『ウルフ・オブ・ウォールストリート』『アイリッシュマン』の監督として世界中に知られ、同時に敬虔なクリスチャンとして知られている名匠マーティン・スコセッシが、イエス・キリストのとある一面にスポットを当て、キリストの磔刑死までの半生を描いた映画。

「キリストには磔刑の際に”このままなんとか助かって温かい家庭を持って天寿を全うしたい”という思いもあったはずだ」という説を基にした内容の異色作。当然、神の使いキリストを祀るキリスト教的にはタブーの題材だった為、なんと世界中で上映反対運動も巻き起こった。

昨年末でもキリスト教徒の多いシンガポール版Netflixで、突然削除されてしまったことが発覚したり、何かと色々ある映画である。

【実際のニュース】

と、そんなこんなあった映画だが、クリスチャンではないワタクシからすると、大して造詣のないキリストに関する変わった映画程度の認識なので、どこら辺に問題があったのかさほどピンとこず、何なら結構楽しめたのだった。

キリストを演じているのは“グリーンゴブリン”ことウィレム・デフォー。キリストを裏切るユダ役にはハーヴェイ・カイテル。他、すっごいちょっとした場面でデヴィッド・ボウイが出演している。

人間としてのイエス・キリストが描かれる為、宗教系の映画でありがちな神秘的な場面は割と少なく、様々な解釈が出来る重厚な内容もありなかなか楽しめる。

キリスト教徒でなければそんなに目くじら立てる程の内容じゃないので、意外と隠れた傑作なような気がする。

「信心の揺らぎ」がテーマなので、ほぼ同様のテーマである、スコセッシの後に手がけた遠藤周作原作の映画『沈黙 -サイレンス-』も続けて観るとより一層興味深い。たぶん。


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「フェイス/オフ」【75/100点】

とあるキッカケで顔を入れ替えることになったFBI捜査官と凶悪犯罪者が、互いの生活(と顔)を取り戻す為に対決(Face Off)する、というストーリーのこの作品。

ザッとストーリーを説明しても理路整然としているかというと微妙な感じもあり、どちらかというと乱暴な設定ではあるが、それでもワタクシの評価は75点。

それは何故か?理由は問答無用で面白いからである。

93年ヴァンダム主演『ハード・ターゲット』でハリウッド進出した香港アクションの鬼才ジョン・ウーであったが、『フェイス/オフ』までの作品は若干精鋭を欠いていた雰囲気もある。

しかし、本作は香港映画時代の特徴でもあった“二丁拳銃”“鳩”“スローモーション”“やりすぎアクション演出”“家族愛・兄弟愛”が存分に登場し、始終ごく普通だった前年公開のアクション映画『ブロークン・アロー』と比べてもその差は歴然。主演はジョン・トラボルタとニコラス・ケイジという暑苦しすぎる2人でありつつ、2人とも確かな演技力で作品を彩っている。邦題が仮に、『男たちの挽歌USA / FACE OFF』とかでも何ら違和感なさそう。

また、ハリウッドでワイヤーアクションが本格活用されるキッカケになった作品でもあり、前述のトラボルタとニコケイと良いトシのおっさん2人が主演ながら、アクロバティックなアクションも必見。「荒唐無稽な話も、面白ければ気にならない」という事実に気が付かせてくれる一本である。

あと、後に『ユナイテッド93』などアツい音楽に定評のあるハンス・ジマーの門下生ジョン・パウエルの音楽もすごいカッコいい。特にラストのボートチェイスシーンとか。

そういえば、元々の構想(ジョン・ウー監督着任前)だと、主演2人の想定はシュワちゃんとスタローンという筋肉バトルアクションであったらしい。

それはそれで観た…くないな。


映画評論「アンタのナマコに塩塗り込むわよ!」連載中!
好きな映画のジャンルはカルト系から一般エンタメ映画まで様々。
自身の男性器を素手で引き千切っているゲイなりの斜に構えた観点で映画をレビューして興奮している変態。
夢は帝国陸軍士官を主人公にしたヒッチコック風のサスペンス映画を監督すること。

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