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サブカルクソ男がオススメするYoutube動画【8】「Halloween – Official Trailer」

梅雨のジメジメ感が始まってきた今日この頃、皆さん如何お過ごしでしょうか?松任谷なめ蔵です。

今日もあなたに「ああ、暇つぶしに見てみるわ」程度の微妙な動画をご紹介致します。

今回は「Halloween – Official Trailer」という動画。読んで字の如く、映画の予告編です。

さて、動画を紹介する前に、皆さん『ハロウィン』というホラー映画をご存知ですか?きっと知らないことでしょう。

『ハロウィン』は1978年にアメリカで大ヒットした殺人鬼モノの映画で、ホラーキャラの代名詞である『13日の金曜日』のジェイソンくんなどに多大なる影響を与えたホラー映画の古典となる映画なのです。その『ハロウィン』を制作したのが、以前トノハジメくんがちょこっと作品を紹介したジョン・カーペンター監督。「バカ映画を作る変態」とも言わんばかりのブログで些か霹靂してしまいますが、このカーペンターという監督はホラー監督としては超1流であり、現在ではホラー映画のお決まりとなっている数々の演出をあみ出した人物なのです。

現在ではホラー映画ではお決まりの三本柱の、怪しい人物の影が通り過ぎた時の“突然の”不協和音、「お前なんでそこに入ろうとするんだ」というバカなキャラ、そして最後…唐突にセックスしたカップルは漏れなく虐殺される、というありがち展開を世界でも先駆けて演出した監督なのです。そのホラーあるある展開を世界で初めて濃縮したのが、ホラー映画『ハロウィン』。

しかし、そんな偉大なる功績の割に日本での地名度、ほぼ0に等しいとも言っていいのです。と言うのも、この『ハロウィン』。続編が8本ほど存在しているのに、そのどれもが日本では“全く”ヒットしていないのです。その理由はおそらく…他のホラーと比べてもかなり地味な展開やキャラクターだからでしょう。

ただ、シリーズに共通するおどろおどろしい雰囲気や、メインキャラクターである「マイケル・マイヤーズ」の不気味な雰囲気は随一で、最近映画にハマっているキッズや、更年期障害に苦しむ中年にも必見の映画であることは言わずもがなです。

そんなホラー映画の古典が今年、アメリカで続編が公開。なんと、初作のジョン・カーペンターが(監督ではないものの)全編の演出監修に回るという、ファンなら射精してしまうかのような情報が。さらにプロデューサー陣は昨年話題になった黒人差別を題材にしたスリラー『ゲット・アウト』などで知られるジェイソン・ブラム率いるブラムハウス・プロダクション。(『ゲット・アウト』は超面白かった!)どう考えても期待せざるを得ない布陣!

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ということで、今回はそんな『ハロウィン』の続編の予告編をご紹介。

最初に出てくるおばあちゃんですが、実は初作の『ハロウィン』でヒロインのローリー・ストロードを演じたジェイミー・リー・カーティス。以前、(こちらもトノハジメ氏が紹介した)バカ映画『トゥルー・ライズ』でシュワちゃんの奥さんを演じたコメディエンヌでもありますが、満を辞してこの『ハロウィン』シリーズに復帰。最後に出演した『ハロウィン・レザレクション』から数えて、なんと16年ぶりの復帰という素敵なお知らせ。ババア頑張るぜ!

また、『ハロウィン』と言えば、ジョン・カーペンター自身が作曲をした名曲『Halloween Theme』も有名なホラーテーマとしても知られているのですが、今回はジョン・カーペンター自身が再度音楽を担当しているとのこと。どおりで音楽がちょっと古臭いワケだとも思ってもしまいますが、マルッとリスペクトを捧げたような雰囲気は見事というもの。

果たして日本での公開はいつになるのでしょうか?

早く映画館で震え上がりたいです。

 

【おまけ】

トノハジメくんが大好きなインダストリアルバンド、ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーが手がけた「Halloween Theme」

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普通の映画じゃ見れない「ドキュメンタリー映画」の世界

皆さん、日曜日の夜は如何お過ごしでしょうか。

流浪のテレビ制作会社勤務のシンセサイザー奏者トノハジメです。

さて、今日まとめるのは久々の映画レビューです。

 

皆さん、ドキュメンタリー映画はご覧になったことがありますか?実はドキュメンタリー映画には名作が山ほど眠っているのですが、知名度は意外とないのが現状なワケです。ということでもう少しでくるゴールデンウィークの為、暇つぶしに最適なドキュメンタリー映画を3本紹介致します。

 

■『アクト・オブ・キリング』

ドイツ映画の巨匠にして、2012年のアクション映画『アウトロー』でトム・クルーズと共演し強烈の印象を残したヴェルナー・ヘルツォークが、プロデューサーとして指揮をしたドキュメンタリー映画。『イッテQ』でおなじみのデヴィ夫人のダンナとしても知られるインドネシアのスカルノ大統領が、軍事クーデターに遭い失脚した際に発生した大虐殺「9・30事件」を題材にしたなかなかハードな内容。実はこの映画、「9・30事件」の発端や影響をそのまま追ったフツーのドキュメンタリーとは一線を画する内容になっています。というのもこの映画、「9・30事件」の中心になった軍人たちに直接インタビューを敢行するというだけでなく、「どのような拷問をしたか」「どのように殺したのか」という同時の所作を満遍なく聞き、挙げ句の果てにそれらを実際に映画仕立てでホンモノのように演じてもらうという内容なのです。事件の当事者たちは「The Act of Killing(殺しの演技)」を、最初は嬉しそうに演じていきますが、自分たちの行ったあまりにも凄惨な行動に困惑し懺悔しまくるという、強烈な因果応報映画なのです。一度観たら、その衝撃に愕然としてしまうでしょう。

 

■『ROOM237』

今からおよそ40年も前、1980年に大ヒットをしたスタンリー・キューブリックによるホラー映画『シャイニング』を、映画解説者たちがあらゆる方面から「考察」をした非公式のドキュメンタリー映画。『シャイニング』といえば、ジャック・ニコルソンや奥さん役のシェリー・デュバルによる「顔芸」が有名な映画ですが、謎が謎を呼ぶような暗喩めいたストーリー展開も特徴で、解説者たちは目をつけたのはその謎への「考察」。一見こじ付けがましい部分から、フムフムと思わせる考察たちは、それぞれ中々の興味深さ。興味深いエピソードは「『シャイニング』原作者のスティーブン・キングが激怒」したという映画内への一場面への考察。実はこの映画の原作を書いたスティーブン・キングが、キューブリックが映画化した『シャイニング』の内容を「過剰に改変された!」と激怒してしまったのはつと有名な話。なんとキューブリックは映画の制作中から、敢えてスティーブン・キングを挑発にかかったというのです。他にもキューブリックにまつわる都市伝説として知られる「宇宙船アポロの月面着陸は彼が撮影した」というエピソードを、映画の中で暗示していたという内容など、サブカルファンが悶絶してしまうようなエピソードの数々。まさに必見の一作です。

※ちなみにタイトル『ROOM237』とは映画に出てくる呪われたと噂されるとある部屋のこと。

 

■『ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録』

1979年に発表され、その難解な作風から賛否両論を巻き起こし、果ては監督・プロデューサーのフランシス・フォード・コッポラを破産させた戦争大作『地獄の黙示録』の舞台裏に迫ったメイキング・ドキュメンタリー。見れば見るほど困惑する映画はどういう経緯で作られたか、という内容でありますが、舞台裏はとにかく無茶苦茶。映画作家としての意地で撮影しまくるコッポラ、どう見てもついていけていないスタッフの皆さん、そして薬物でヘロヘロになった俳優達など、『地獄の黙示録』の映画の内容に恥じないかのような絶望的な内容は必見。一度鑑賞したら「よくこの映画、完成したな」と思わず呟いてしまうこと請け合い。中でも必見なのは撮影当時、ベロベロのジャンキーであった名優デニス・ホッパーに対して「君がちゃんとしなきゃ…」と激怒する一場面。監督に激怒されながら、ラリって「でへへ〜」と笑っているデニス・ホッパーには戦慄してしまいます。思わず「この時代に生まれてなくて良かった」と思ってしまう一場面です。

 

■『ジム&アンディ』

強烈な顔芸を得意とするハリウッドのコメディ俳優ジム・キャリー。『マスク』や『ブルース・オールマイティー』など、底抜けにハイテンションなキャラクターと過剰すぎる演技で90年代・00年代を代表するコメディ俳優となりました。しかし、彼はその裏で様々な感動系のドラマ映画にも出演していることは正直あまり知られてはいません。彼が1999年に出演した『マン・オン・ザ・ムーン』はジム・キャリーの俳優キャリア上で最も評価を受けた映画で、実在の人物「アンディ・カウフマン」としての演技は特に秀逸です。このドキュメンタリーはそんな『マン・オン・ザ・ムーン』の舞台裏と、何と現在では少しキャリア停滞気味なジム・キャリーが自分自身の俳優人生を語るという、少しほろ苦い内容。何がすごいかというと、『マン・オン・ザ・ムーン』撮影時のジム・キャリーの撮影現場での横暴とも言える態度の数々。実はこの映画の撮影中、あまりにも「アンディ・カウフマン」という人物にのめり込みすぎてしまい、アンディ自身が存命時に引き起こしたトラブルを諸々再現してしまったからなのです。困惑して頭を抱える『アマデウス』などで知られる巨匠ミロス・フォアマン、ジム・キャリーを本気で殴りにかかるプロレスラーなど、とにかく強烈な場面の数々。必見です。

 

■『FAKE』

地下鉄サリン事件後のオウム真理教に迫ったドキュメンタリー映画『A』で知られる森達也監督による、あの佐村河内守に迫ったドキュメンタリー映画。「結局耳は聞こえたの?聞こえなかったの?」という単純な疑問を、本人の気持ちを踏み躙るかのように迫る、言わば死体蹴りのような映画ではありますが、ただ否定するだけでないという点がこの映画の特徴。当然ながら佐村河内本人の意見としては難聴についての結論が出るわけもありませんが、思わず最後まで見てしまうことは請け合い。必見です。

 

ゴールデン・ウィークも近づいて参りましたが、『ブラック・パンサー』なんざ観に行くよりも、家でドキュメンタリー映画などいかがでしょうか?

それではまた来週。

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昔の映画も面白い!80’s以前の映画8作品

トイレの中からこんにちわ。孤高の貴公子トノハジメです。

さて、私は前から映画が大の大好きで、最近では新宿バルト9のレイトショーで独り鑑賞の無間地獄に苦しめられている、末期の病的映画好きなのですが、お家で酒を飲みながら映画を観るのもまたオツだなと思う今日この頃です。

遡ること小学校の時。これまたドエライ映画好きである父親に連れられて通い詰めた実家近所のレンタルビデオ店は、(既に潰れてしまったものの)私の人生を決めた場所との言っていいです。親子共々そんなレンタルビデオの犬だった時代、シュワちゃんのアクション映画だったり最新ヒット作を借りようとする僕を横目に、父親が持ってきた古い映画が忘れられない私。今回はそんな“忘れられない”映画を調べて、さらに改めて鑑賞して、オススメの古い映画を抽出してみました。

「古い映画」というと定義をしないといけませんが、80’sのファンキーな映画群は抜きにして、遡って80年代以前の映画を抽出しております。実は80年代以前の映画はアイディアが豊富でありつつ、だいぶ無茶をやる些かワイルドな撮影方法が特徴で、「やりすぎだろ」と鑑賞しながら我に返ってしまうなんてことも。そんな稀代の人斬り・岡田以蔵の如き、80年代以前の映画のオススメ作品をまとめました。昔の名作ではなく、はたまたカルト映画でもなく、単純に「今観ても全然面白い」という観点から選びました。これで興味を持った方は是非ともすぐにお近くのレンタルビデオ店まで。

 

■博士の異常な愛情

 

▼公開年:1964年▼製作国:イギリス・アメリカ▼監督:スタンリー・キューブリック▼原題:DR. STRANGELOVE: OR HOW I LEARNED TO STOP WORRYING AND LOVE THE BOMB▼正式邦題:博士の異常な愛情/または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか

1964年公開、米ソ冷戦時代の核問題を題材にしたブラック・コメディ映画。監督は『2001年宇宙の旅』や『シャイニング』等、後世に多大なる影響を与えた名匠スタンリー・キューブリック。米ソ冷戦当時に作られているものの、あまりにもデリケートな内容をまとめていた為、公開の際に米政府からも目をつけられたという、曰く付きの一本です(その為、映画冒頭では米空軍による「この物語は現実ではあり得ない」という注釈が入っている)。ストーリーは米軍将校による嘘の蜂起による、核戦争の危機。登場する人物のほとんどが異常者で、核戦争の危機にも関わらずとんでもない行動を繰り広げまくる登場人物たちの姿は、思わず爆笑してしまうこと請け合い。20世紀を代表する映画監督キューブリックが仕掛けた、戦争についての知的な暗喩もさることながら、独特の素っ頓狂な展開は他の映画では味わえません。核弾頭にカーボーイのように跨り、核の大爆破を迎える衝撃のラストは大注目。名優ピーター・セラーズが演じるマッド・サイエンティスト“ストレンジラブ博士”の狂気溢れる演技も見所。

 

■吸血鬼ゴケミドロ

▼公開年:1968年▼製作国:日本▼監督:佐藤肇

ゴジラやウルトラマン等、特撮マン円谷英二仕込みの子供向けSF・特撮作品が流行っていた60年代において、ハードSF小説の如き設定で展開する海外でも評価が高い松竹映画のSFスリラー。「野球」「潜水艦」「擬態系の侵略モノ」が題材になった映画はつと面白い映画が多い、とはウンチクたれ蔵こと僕がよく言う言葉であり、この映画に置いても例外ではないです。そう、この映画、邦画において初めて“人類に擬態した宇宙人が人類を襲う”という題材を取り上げた映画なのです。舞台は小型飛行機と、墜落した飛行機の周辺が中心となっており、擬態エイリアン“ゴケミドロ”の魔の手から逃れる為に、疑心暗鬼になってしまう10人あまりの乗客たち。あのタランティーノの自身の監督作品『キル・ビル Vol.1』の中でもオマージュを捧げた、ドギツイ真っ赤っかの空を飛ぶ飛行機の特撮の印象的な一作。もちろん、面白さも折り紙つき。ちなみに、公開当時の併映作品は現在の美輪明宏こと丸山明宏主演・三島由紀夫原作戯曲の映画化の『黒蜥蜴』。すごい濃いラインナップだこと。

↓『キル・ビル』での実際のオマージュ場面(もろパクリ!)↓

 

■県警対組織暴力

▼公開年:1975年▼製作国:日本▼監督:深作欣二

『仁義なき戦い』の広能昌三役等、「ヤクザといえばこの人!」とばかりに70年代にヤクザ役をやっていた菅原文太。そんな彼が初めて刑事役に挑戦したのが本作。とはいえ、ヤクザとはバリバリ癒着をしている悪徳警官で、時には取り調べでチンピラをボコボコにするなどやりたい邦題。『トレーニング・デイ』のデンゼル・ワシントンでさえ霞んでしまう悪徳警官っぷりが、こちらも同じく『仁義なき戦い』の深作欣二監督により映画化されたのが本作。揺れに揺れる臨場感溢れるカメラワークに、ビミョーにダサいけどやたら印象に残るサントラ等、雰囲気は思いっきり『仁義なき戦い』であるものの、菅原文太のエネルギッシュな演技と、こちらも大ハッスルしている相手のヤクザ役の松方弘樹の演技合戦が見所の本作。前述したチンピラをボコボコにして、挙句全裸にさせて自供させる取り調べシーンや、松方弘樹が劇中中盤で見せる“THEヤクザのセックス”と言わんばかりの「死んじゃう〜!」「死ねぇぇぇ!」(その直後に酒を女性に吹き付ける!)というあり得ないけど無ッ茶苦茶エロい淫行場面も見所。マグロ釣り俳優・松方弘樹が、女をマグロにしている衝撃の場面です。

 

■SF/ボディ・スナッチャー

▼公開年:1978年▼製作国:アメリカ▼監督:フィリップ・カウフマン▼原題:Invasion of the Body Snatchers

前述『吸血鬼ゴケミドロ』でも触れている通り、「野球」「潜水艦」「擬態系SF」は面白い映画が多いという法則。これは擬態系侵略モノSFの中でも随一の出来を誇るSFスリラーです。原作はSF作家ジャック・フィニィによる傑作小説「盗まれた街」。本作以前にも映画化もされている“スナッチャー系SFの元祖”の2度目の映画化となります。主演は『24』のジャック・バウアーで知られるキーファー・サザーランドの親父にして、最近では数々のおじいちゃん役をこなしているドナルド・サザーランド。この映画で初めて書かれたのが宇宙人による人類となるまでの擬態シーン。これがヒジョーに気持ち悪いのが特徴で、不気味な音楽と相まって物凄い怖い場面になっています。後年、気持ち悪い擬態シーンで、現在でもカルト的人気になっている、80’sの傑作SF映画『遊星からの物体X』に勝るとも劣らない擬態シーンは必見です。また、後味が悪すぎる最悪の結末を迎えるラストは、背筋が凍るような恐ろしさ。ちなみに、この映画、人間の顔をした犬…所謂“人面犬”が登場する映画でもあり、日本ではこの映画により「人面犬のおっさん」という都市伝説が生まれた、というホントっぽい噂もあるとか。その場面もかな〜り不気味。背筋が凍るような恐怖を味わいたい人は必見の映画です。ちなみに監督は、インディ・ジョーンズシリーズ1作目『レイダース/失われたアーク』の原案(初期稿)を担当したフィリップ・カウフマン。1993年に日米貿易摩擦のテーマにした物凄いクソ映画『ライジング・サン』を手がけた後に、キャリアが思いっきり下降路線になったちょっと人生設計がおかしい監督でありますが、そんなクソ映画メーカーの一人の光り輝く名作です。

↓問題のラスト。どういう結末かは実際に観てご確認を(顔芸)↓

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■アギーレ/神の怒り

▼公開年:1973年▼製作国:西ドイツ▼監督:ヴェルナー・ヘルツォーク▼原題:Aguirre, der Zorn Gottes

ベルリンの壁が崩壊する遥か前に西ドイツで作られた歴史映画。“歴史映画”とは言うものの、この映画の見所は現在では絶対に無理な、どう観ても常軌を逸した危険ロケ映像。この映画を観たら、「ああ、イッテQなんて大したことねえんだな」と思ってしまうこと間違いなし。まずオープニングから「これどうやって撮ってんだ…」と絶句してしまうような登山隊の様子で、早々に度肝をを抜かされてしまいます。続くあまりにも危険な映像の数々と、役者陣の演技ではない疲労困憊した顔(というか今にもブチギレそうな顔)でハラハラさせられます。とはいえ、内容は真面目そのもので、主人公を演じるドイツを代表する怪優クラウス・キンスキーの狂気が溢れる演技は必見。この映画の撮影時に、クラウスがブチギレて銃を乱射しエキストラの手を吹っ飛ばした、という衝撃のエピソードも残る本作。そんな壮絶すぎる撮影現場エピソードを調べてからみるのも楽しい一作。ちなみに監督は現在ではハリウッドでも活躍するヴェルナー・ヘルツォーク。こんなファンキーな映画を撮った監督も、歳をとって丸くなり、最近ではトム・クルーズの『アウトロー』で、俳優として不気味な黒幕役を楽しそうに演じていました。

 

■フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ

▼公開年:1966年▼製作国:日本・アメリカ▼監督:本多猪四郎▼英題:War of the Gargantuas

1966年。実はこの年にあの有名なウルトラマンが誕生するなど、「特撮=ファミリーもの」という図式が決定してしまう年であったのです。特撮映画の代名詞、ゴジラシリーズも当時、『怪獣大戦争』など、かなり家族層を意識した内容に転換していった時期でもありました。そんな1966年に、ゴジラの一作目を手がけた本多猪四郎監督の指揮により誕生したのがこの映画。この映画に登場する「サンダ」と「ガイラ」、実はこの2匹兄弟なのです。そしてコイツら特撮怪獣のクセして妙にリアリティがある身長でもあります。1954年に公開された『ゴジラ』は身長がおよそ50メートルとのことで、そんな巨大生物が都市部を破壊して廻るという、カタルシスは熱狂を持って迎えられましたが、この映画の怪獣2匹、なんと20メートルちょっと、下手したらそれよりも小さい。なので、普通に「巨人」ってくらいのサイズである。しかも2匹とも怪獣らしくノシノシ歩くのかと思いきや、めっちゃ走り回る。しかも弟怪獣のガイラの方は、そればかりか食人癖もあり、泣き叫ぶおばちゃんを捕まえては頭から搔っ食らうのです。実はこの『サンダ対ガイラ』ですが、そんな場面の数々もあり、この時に観たキッズたちの「怖かったよ〜」とばかりの“トラウマ映画”として認識されているとのこと。そりゃそうだ、今観ても怖いもん。内容は平和を愛する“サンダ”と凶暴な食人怪獣“ガイラ”の大規模な兄弟喧嘩。ガイラが羽田空港に現れて暴れまくる場面は、怖さと大迫力のツインコンボで必見です。そういえば、井筒監督のヤンキー映画『岸和田少年愚連隊』でサンダとガイラなる兄弟ヤンキーがいたと思うのですが、おそらくこの映画が元ネタだと思われます。

 

■トラ・トラ・トラ! 

▼公開年:1970年製作国:アメリカ・日本▼監督:リチャード・フライシャー/舛田利雄/深作欣二▼原題:Tora! Tora! Tora!

第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦を日英独それぞれの視点から描き高い評価を受けて大ヒットを記録した『史上最大の作戦』。そのスタッフが再集結して、今度は日本軍による真珠湾襲撃作戦を日米双方の視点から描いた映画が本作。昨年、本物の戦闘機を飛ばして大規模な撮影をしたことで話題になった『ダンケルク』の遥か45年も前に、本物の戦闘機を飛ばして真珠湾攻撃を再現してみせたこの映画ですが、今観ても遜色がないほどの大迫力の襲撃シーンが見所です。尚、本作の元々の監督はあの黒澤明であったという事実は、映画ファンにはよく知られたハナシ。何でも巨匠・黒澤明はこの映画に意欲マンマンで、他監督との共作という制作体制をガン無視して、ワンマン体制で掌握しようとして大失敗、挙句気が触れて降板してしまったという、邦画史上の天才らしからぬトホホエピソードが残ってしまっており、降板(というより、実質クビ)の後、気を病んで自殺未遂を引き起こしてしまったそうです。その辺のエピソードをまとめた文藝春秋によるメイキングルポ「黒澤明vs.ハリウッド―『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて」はとても面白いので、鑑賞後にしっぽりと読むのに必見です。黒澤明という監督の人間味と狂人っぷりが十二分に詰まった傑作小説です。私、戸野ハジメが愛読する一冊です。並みの犯罪小説よりも遥かにスリリング。

 

■ライフ・オブ・ブライアン 

▼公開年:1979年製作国:イギリス▼監督:テリー・ジョーンズ▼原題:Monty Python’s Life of Brian

イギリスのドリフターズ的な存在であるコント集団「モンティ・パイソン」。オックスフォード大学、ケンブリッジ大学と二大インテリ大学出身のコメディアンが集まった世界でも有数のインテリコメディ集団です。そんな彼らの、宗教を題材とした傑作コメディ。政府の体制や、一般市民の滑稽さを戯画化したコメディ番組「空飛ぶモンティ・パイソン(Monty Python’s Flying Circus)」で人気を博した彼らの、入魂のコメディ映画の2作目の作品で、前作『モンティ・パイソン・アンド・ザ・ホーリー・グレイル』ではアーサー王伝説を茶化したコメディを作り上げた彼らが、満を辞して発表した題材は何と“イエス・キリスト”と“聖書”。主人公はキリストと“同時期”に生まれた青年ブライアン。彼はふとしたことから(そして、不本意ながら)、宗教家・革命家として祭り上げられて、悲劇の人生を歩むことになります。ストーリーだけだと、さも悲劇のおハナシで救いようのない様子であるものの、そこはモンティ・パイソン、溢れんばかりのパロディと知的なギャグでまとめてしまったのです。当然ながら、信心が深い人々に猛抗議を受けて上映禁止の国なども出してしまうなど、世界中で賛否が別れたという本作。ギャグとシリアスが紙一重とは良く言ったもので、モンティ・パイソン最大の問題作という世評があるのも頷ける内容です。とはいえ、肝心の内容もとっても面白くて、「良くこんなハッタリが思いつくな〜」と度々関心しつつクスッと笑ってしまう上級の作品になっています。ラストに流れるメンバーのエリック・アイドルが作曲した「Always Look on the Bright Side of Life」は、過去の評価に反して現在ではイギリスを代表する名曲として君臨しており、2012年のロンドン・オリンピックでも演奏されたほど。上級なコメディ映画とは、まさにこの映画の為にあります。もしかしたら、この映画は誕生するのが早すぎたのかもしれませんね。

↓突然のラスト。何故か感動してしまうのが悔しい↓

↓さらに、実際のロンドン五輪での場面↓

 

以上、古い映画の面白い映画まとめでした。これからも、あなたの映画生活を我々が一丸にサポートしていきます。それでは次回。

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『アウトレイジ 最終章』公開記念!今こそ全部観たい…映画・北野武作品大特集!

みなさんコンニチワ。土曜日のにゃんこスター・トノハジメです。

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さて、昨日に大ヒットバイオレンス映画シリーズの完結編『アウトレイジ 最終章』が公開されました。粋な台詞に凄惨なバイオレンスシーン、そして北野作品らしい乾いたユーモアなどで、現在まで多くのフォロワーを持つ本作品。実は私トノハジメもそんなフォロワーの一人。

ということで今回は、そんなアウトレイジについてまとめると同時に、“北野作品特集”と題しまして、『アウトレイジ』シリーズだけでなく、北野作品全てを振り返るという、北野作品ファンが泣いて喜ぶような内容をまとめていこうと思います。

 

1、北野映画について

遡ることおよそ30年前。『仁義なき戦い』『県警対組織暴力』(後年では『バトル・ロワイアル』等)の深作欣二監督、ビートたけし主演の刑事を題材としたバイオレンスアクションの制作が開始。しかし、撮影開始直前にして深作欣二とビートたけしのスケジュールに折り合いがつかないことが発覚し、制作が一時頓挫してしまい、その折で深作監督は降板。「深作監督だから」ということで主演を引き受けたビートたけしも降板仕掛けるものの、常々演出業に興味を持っていたとされる北野はこの主演映画を自身の初監督作品として演出を担当することにより、主演として舞い戻る。これが北野作品の最初の映画『その男、凶暴につき』です。

初期作品では叙情的な作風と青を基調とした映像美(海外ファンの間では“キタノブルー”とも呼称されているとか)が特徴で、ジメッとしたバイオレンスシーンと映像美の対比が海外の評論家や映画ファンに好意を持って受け入れられました。

実は北野作品は作風に関して何度か転換期があるのも特徴。この作風の転換はそれぞれ事件や事象が原因であるのがポイント。

まずは4作目『ソナチネ』。東京を追われたヤクザを題材とした作品で、初作『その男、凶暴につき』で微かにあった娯楽性すらも排除した、北野監督自身の作家性が強烈に反映された作品となっている。作品中ではひたすら陰惨な雰囲気の中、「死」へ向かう主人公が描かれています。この公開からおよそ1年後、北野自身はビッグスクーターでの事故により生死の彷徨うほどの大事故を引き起こします。近年では、本人の口から「あの時は死にたかったんだろうな」とも回想していることもあり、「死ぬことに対する興味」が強烈に反映されています。後の作品の『HANA-BI』でも同様のテーマが扱われています。『HANA-BI』は独特の死生観などが海外で高い評価を受けてヴェネツィア国際映画祭では最高賞であるグランプリを受賞しました。

次の転機となったのが『HANA-BI』の次作、『菊次郎の夏』。久石譲による名テーマ曲「Summer」でよく知られる本作ですが、この作品では北野作品として初めて「死」という場面が一切表現されない、人情ドラマとしての一面を持つ作品となりました。主役は10歳ばかりの子供と不器用な生き方しか出来ない男、北野本人が演じる「菊次郎」。「菊次郎」とは北野の実父の名前と同じ。言うまでもなく父親の像を具現化した存在となります。これまでの作品では北野自身のダークな一面が顔を覗かしている作品ばかりでしたが、この作品から“家族”というモノを取り上げることになります。この作品の次の作品である『BROTHER』は兄弟の話に、その次の作品の『Dolls』ではカップルの話となっています。

そして、次の転機は勝新太郎の代表作をリメイクした『座頭市』。この作品の特徴は娯楽性と作家性の両立に成功したことで、現在までの北野作品の中で最大のヒット作品となっています。ただ、北野自身としてはこの大ヒットで、次作の期待値が上がってしまったことにかなりのストレスとジレンマがあったことを明かしています。その為、その後の作品は“芸術家三部作”と言われる、「出来不出来に関わらず、自分の思い通りに作った」という、かなり奇妙な三作となってしまいました。さらに、『座頭市』では、それまでの作品で音楽を担当していた久石譲から、ムーンライダーズのリーダーの鈴木慶一になり、今までのエモーショナルな音楽から一転、血の気の通らないようなクールな音楽になりました。

続く転機は今回取り上げている『アウトレイジ』シリーズ。本人も「ヒット作品を狙って作った」と言っている通り、作風に関してはかなりの転換が見られるようになりました。分かりやすい部分だと、『アウトレイジ』の特徴でもある会話劇の多さ。今までの作品では説明的な台詞は最低限、故にドライな作風を確率していました。しかし、『アウトレイジ』では罵詈雑言の嵐とも言える怒号の数々。時に冷血で時にユーモラスな言葉の遊びっぷりが、外連味溢れる北野作品の歴史に新たなる1ページを与えました。もう一つの特徴は次々に登場する豪華なキャスト。三浦友和、石橋蓮司、椎名桔平などの有名ベテランから、加瀬亮や塚本高史などの演技派の若手など、登場する人物たちはとっても豪華。続き『~ビヨンド』でも西田敏行を筆頭に桐谷健太や新井浩文など、若者に人気のキャストも多数起用されました。また、2作に続く『龍三と七人の子分たち』では分かりやすい作風に振り切ったエンタメ作品となっています。

『アウトレイジ 最終章』でも多くの豪華キャストが共演、その進退(そして“殺され方”)が注目を集めています。

 

2、北野作品、全作品解説

『アウトレイジ 最終章』は北野作品18作目。30年近いキャリアがあるものの、意外と寡作だったりもしますが、今回は全作品を私が責任を持って解説します。

『その男、凶暴につき』(1989年)

《あらすじ》一匹狼の刑事・我妻諒介は凶暴なるがゆえに署内から異端視されていた。ある晩、浮浪者を襲った少年の自宅へ押し入り、殴る蹴るの暴行を加えて無理矢理自白させた。暴力には暴力で対抗するのが彼のやり方だった。麻薬売人の柄本が惨殺された事件を追ううち、青年実業家・仁藤と殺し屋・清弘の存在にたどり着いたが・・・

記念すべき初の“北野武監督作品”。ドライで血の気の通っていないような暴力シーンが特徴で、悪~い人に延々ビンタする場面も、本気でずっとビンタしているので痛ッい痛い。その他の暴力シーンも痛覚を刺激するような場面ばかりでとても印象的。とはいえ内容というと、これがなかなか面白いハミダシ刑事の物語。初監督作品としてだけでなく、圧倒的な完成度で初作から高評価を受けたバイオレンス映画の名作です。

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『3-4×10月』(1990年)

《あらすじ》ガソリンスタンドに勤めている雅樹は、野球チーム“イーグルス”に所属している。試合が終わってガソリンスタンドに戻った雅樹は、暴力団大友組組員・金井の車の洗車を押し付けられるが、トロい雅樹はウロウロするばかり。逆上した金井に殴られた雅樹は、負けじと殴り返そうとするが軽くいなされてしまう。さらに金井は「骨が折れた!」と騒ぎ出し・・・

この作品、音楽がほとんどないのが特徴で、ひたすら遊びの場面や暴力シーンで埋め尽くされた映画となっています。つまり構成力の力で乗り切った、ってこと。2作目にして興行としては大失敗してしまったものの、後々の独特の作風を印象付ける、原石のような作品。ちなみにヒロインは現在美魔女としてインスタ等のSNSでブンブン・グイグイ言わせている若き日の石田ゆり子。「アレ!?昔の方が老けてるじゃねえか!」とツッコミながら見るのも一考かと。また、ブレイク前の“トヨエツ”こと豊川悦司や小沢仁志も出演。小沢仁志の地方のヤンキーのようなアイパーの髪型も必見。

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『あの夏、いちばん静かな海。』(1991年)

《あらすじ》茂は生まれつきの聴覚障害者で、掃除車の助手をしている。ある日、海岸脇のゴミ収集所に捨ててあった壊れたサーフボードに心ひかれた茂は、それを持ち帰って修理し、早速恋人の貴子を連れて海辺に出掛けた。貴子もまた茂と同じろうあ者だった。茂は必死にサーフィンに挑戦するが失敗の繰り返し。常連のサーファーたちに笑われながらも練習に明け暮れる茂は・・・。

前作の“音楽がほとんどない”という映画から打って変わって、今度は台詞がほとんどない映画に挑戦した北野作品。主人公が聾唖だという設定上、主人公は一切喋らない。ヒロインも喋らない。この作品から久石譲との10年近くに渡る音楽タッグが始まり、感動的な音楽と叙情的な映像美はさらなる進化をすることになります。桑田佳祐が監督した映画『稲村ジェーン』に対抗した作品とも言われますが、カップルモノでありそうなラブシーンなどもなく、独特のテンポの中緩急が備わった編集が素晴らしというモノ。ちなみに、この作品から自作の編集は自分で行うという制作スタイルになる。北野監督が初めてセンチメンタリズムを前面に出したとも云える映画。主演の聾唖青年・茂を演じたのは、前田美波里の息子の真木蔵人。

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『ソナチネ』(1993年)

《あらすじ》北嶋組幹部・村川は、組長から沖縄の友好団体・中松組が敵対する阿南組と抗争しているので助けてほしいとの命令を受けた。村川の存在が疎ましい幹部の高橋の差し金だったが、結局村川は弟分の片桐やケンらを連れて沖縄へ行く。沖縄では中松組幹部の上地や弟分の良二たちが出迎えてくれるが村川らが来たことでかえって相手を刺激してしまい、抗争はますます激化し・・・

前述の通り、この作品は中盤まで行くと「ああ、主人公は死にたがっているんだ」と思わせる(おそらく意図的な)演出がなされていることに気がつきます。初監督作品の『その男、凶暴につき』に次ぐくらいの暴力シーンの嵐であるが、この作品暴力シーンだけでなく、ロケ地の沖縄の風景を生かした色とりどりの風景が魅せる映像美が魅力的な作品になっている。私自身この作品すごく好きな映画であるものの、「この映画の何が良いの?」と聞かれたらなんて答えたら良いか迷う気がします。そんな不思議な映画。

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『みんな~やってるか!』(1995年)

《あらすじ》いい男といい女がカー・セックスをしているところを夢に見た朝男は、「やっぱり女をひっかけるには車だよな」と考えて、早速自動車ディーラーへ向かう。カー・セックス出来る車を下さいと買った20万円の軽自動車に乗って、ナンパしまくるが、そんな車では女は相手にしてくれなかった。ガックリする朝男の上を大型トラックが通り過ぎて行く。ペシャンコになった車の中で、朝男は「やっぱオープンカーでなきゃ、ダメだ」と考え・・・

“北野武作品”としてではなく、いち芸人“ビートたけし”として第1作となるという意味合いで発表された初のコメディ映画。とはいえ内容はとってもテキトーでどうしようもない。とはいえ、“ビートたけし”の映画らしい、シニカルな笑いが多数内包された映画で、自由自在な展開は構成と作家性の自由さを感じさせる。過去作品からのパロディも豊富で、『ゴースト・バスターズ』のパロディの場面(音楽がソックリ!)と『ザ・フライ』の変化球過ぎるオマージュ(映画のラスト!)の場面は抱腹絶倒。生死を彷徨う事故に遭った後と思うと、尚面白い映画。

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『キッズ・リターン』(1996年)

《あらすじ》高校時代の同級生だったシンジとマサルは、ある日、偶然再会し、バカなことばかりにエネルギーを費やしていた昔のことを想い返した。18歳の秋、シンジとマサルはいつもつるんで行動し、学校をサボってはやりたいことだけを楽しむ毎日を送っていた。ある夜、ヤクザに絡まれたシンジとマサルは、それを咎めた組長の迫力に素直に感動を覚える。そんなころ、以前にカツアゲした高校生が助っ人に呼んだボクサーにのされてしまったマサルは、自尊心をひどく傷つけられ、自分もボクシングを始めるのだった・・・

北野作品の中でも随一の“熱さ”を秘めたこの作品。私トノハジメはとても大好きな映画で、久石譲のリズム感のある音楽と、迫力のあるボクシングシーンが印象的なこの作品。落ち込んだ時には最適な映画で、(結果として救われない話ではあるものの・・・)とにかく若さとカッコよさに満ち溢れた映画。北野自身は「この映画は(事故後の)リハビリの映画」と数々の書籍・インタビューで残してはいるものの、言わずもがな映画監督としてではなく一人の人間として再起を図った作品であることは明白。「何か挑戦をしなくては・・・」、そんな時にすごく元気が出る、邦画でも至高の名作です。「馬鹿野郎、まだ始まっちゃいねえよ」と新たな人生の始まりと、更なる失敗を予感させるグッドエンドともバッドエンドとも捉えられるラストはとても印象的。

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『HANA-BI』(1997年)

《あらすじ》凶悪犯の張り込みの最中に親友で同僚の堀部の好意に甘え、数カ月前に幼い子供を亡くし失意のまま体調を崩していた妻・美幸を病院に見舞った西は、そこで妻が不治の病で助からないことを聞かされる。ショックを受ける西。だがそんな彼に、更に堀部が犯人の凶弾に倒れたとの連絡が入った。その後、犯人は別の場所で発見されるも、逮捕へのあせりから西は失態を演じ、後輩の田中が命を落としてしまう

世界三大映画祭ヴェネツィア国際映画祭で最高賞である金獅子賞を受賞し、北野武という映画監督の地位を決定づけた一作。過去作のような痛覚にくるバイオレンスシーンと、前作『キッズ・リターン』で人間の絆や情の再生の映画を確立した北野作品を合わせたかのような作品で、一筋縄ではいかないものの北野作品では随一の感動作となっています。

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『菊次郎の夏』(1999年)

《あらすじ》幼い頃に父親を亡くし、今はおばあちゃんとふたりで浅草に暮らしている小学校3年生の正男にとって、夏休みはそんなに楽しいものではなかった。学校の友達はみんな家族で旅行に出かけてしまうし、サッカークラブもお休み、おばあちゃんも仕事で昼間は家にいないのだ。そんな時、彼は遠くの町にいるお母さんに会いに行く決心をする。絵日記と宿題と僅かな小遣いをリュックに詰めて、家を飛び出した正男。そんな彼の気持ちを知った近所のおばさんが、夫で遊び人の菊次郎を同行させることにした。

北野武の父親、北野菊次郎さんが飲んだくれでどうしようもないが純粋そのものの人間であったというのは良く知られるお話。北野自身、この作品の後年『菊次郎とさき』という家族ドラマのエッセイをまとめている中でも語られている通り、かなり昔気質で不器用な人間であったそう。この映画の主人公“菊次郎”は名前の通り、自身の父親を投影させた映画のよう。ヤンチャで他人のことはどうでも良いと思いきや、主人公の正男くんがシュンと落ち込む様子に居ても立っても居られないものの、どうしたら良いのか分からない主人公「菊次郎」。“どうにかして父親代わりになりたい”という不器用なりの攻防は思わず胸が熱くなります。

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『BROTHER』(2000年)

《あらすじ》ヤクザの抗争の最中、組を追われ、ロサンゼルスに留学している弟・ケンを頼って渡米した山本。ケンは、黒人デニーたちとヤクの売人をしていた。そんな彼らが起こしたひとつの事件が、縄張り抗争に発展。ヒスパニックのチンピラからチャイニーズ、イタリアン・マフィアをも巻き込んだ、絶体絶命の戦争が始まった……。

北野作品唯一の海外資本の作品で、製作費は北野作品でも最大の12億円。プロデューサーは常連の森昌行(オフィス北野の社長)と、北野が初めて海外で脚光を浴びることになった『戦場のメリークリスマス』のジェレミー・トーマス。“血の気の多い組長”という、後の『アウトレイジ』のような組長が主人公で、海外資本であるものの、「仁義」や「絆」「兄弟愛」が色濃く描かれる。映画内の台詞「“Fuckin’ jap”くらい分かるよ馬鹿野郎!」はテレビのCMなどでも度々流され、僕と同年代の子供たちの、脚光のモノマネの的となりました。伝説のアクション俳優クリント・イーストウッドも絶賛したというバイオレンスアクション。海外資本であるが故、編集等でトラブルが起きそうになったというが、北野は断固として最終編集権(ファイナルカット権)を主張。「それだけは譲れない!」とポリシーを曲げなかったという、カッコいい裏話があったりする。

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『Dolls』(2002年)

《あらすじ》松本は、結婚を約束していた恋人・佐和子を裏切り、ある社長令嬢との結婚を決めた。結婚式当日、友人から佐和子が松本と別れてから精神を病み、ついに自殺を図り、それが原因で記憶喪失になり松本の事すらも全くわからなくなり、子供のようになってしまった。佐和子は松本が買い与えたおもちゃが壊れるまで遊び、デコトラの光に喜び、トラックの前に満面の笑みで立ち尽くすなど、松本の手を焼き、佐和子の元に戻りお互いの体を赤い縄で結び付け、あてどない放浪の旅に出る……。

人気絶頂のトップアイドル・春奈。そんな春奈に心酔している温井は、彼女のことばかりを思い続ける毎日を過ごしていた。だがある日、春奈は交通事故に遭い片目を失う。それと同時にトップアイドルの座からも転落し、ファンの前から姿を消した。それでもなお春奈に会いたいと強く願う温井が取った行動とは……。

数奇な運命にある2組のカップルを題材にした、『あの夏、いちばん静かな海。』以来のラブストーリー。それまで脚光を浴びた“キタノブルー”との呼ばれる瑞々しい「青」の風景だけではなく、極彩色に彩られた独創的なビジュアルセンスが特徴。登場する俳優も意外と豪華で、カップルの1組目は『MOZU』シリーズの西島秀俊と元祖天然女優菅野美穂、もう一組のカップルの女性を演じているのは深田恭子。

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『座頭市』(2003年)

《あらすじ》居合い斬りの名人座頭市は、とある宿場で幼い頃に両親を盗賊に殺され、その復讐を誓う芸人姉妹と、故あって浪人する剣の名手、服部源之助に出会う。宿場を仕切るヤクザの銀蔵が、姉妹の親の敵らしいと判明するが、銀蔵が源之助を用心棒に雇ったことから、市と源之助は闘うはめになる。

言わずもがな、北野作品では最大の大ヒット(28億円)となった映画。さらに独特の作風から海外での評価も抜きん出たものとなり、以前『HANA-BI』で最高賞を受賞したヴェネツィア国際映画祭ではさらなる評価を得て、最高賞の次賞である銀獅子賞(監督賞)を受賞しました。北野自身によるスピーディな殺陣も高い評価を受けました。

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『TAKESHIS’』(2005年)

《あらすじ》テレビや映画で活躍するセレブ、ビートたけし。彼にそっくりな北野武はうれない役者で、オーディションを受けても落ちてばかりで、コンビニの店員をしていた。が、そんな北野がビートたけしと出会ったことから、たけしが演じる映画の世界へと迷い込んでいく。

北野作品芸術(スランプ)三部作の1作目。前作『座頭市』の娯楽性と芸術性が感化した作風から一転、『みんな~やってるか!』のような自由な作風に回帰した一作。内容はデヴィッド・リンチの映画のように衝動的でワケがわからない。とはいえ、映像に対しての拘りは随一のもので、「前作の大ヒットには惑わされないゾ!」と言わんばかりの構成は見事。清純派女優の京野ことみが初ヌードを披露した作品としても知られています。

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『監督・ばんざい!』(2007年)

《あらすじ》自身が得意とする暴力映画の制作を封印したキタノ・タケシ監督は、ヒット作を生み出すべく、小津風人情劇『定年』、『追憶の扉』などの恋愛映画、昭和30年代風映画『コールタールの力道山』、ホラー映画『能楽堂』、忍者アクション映画『蒼い鴉 忍 PART2』など様々なジャンルの映画に挑戦するも、どれも上手くいかない。キタノは最終的に、詐欺師の親子・高円寺久美子と喜美子を主人公としたSF作品『約束の日』を製作し始める。

北野作品芸術(スランプ)三部作の2作目。この作品、前作よりも輪をかけて意味不明になった。とはいえ土壌である芸人としての“ビートたけし”と国際的映画監督となってしまった“北野武”との軋轢を色濃く反映させた映画で、その心の叫びのようなシニカルな笑いは思わず「これ笑っていいのかな・・・」と思ってしまうような雰囲気。とはいえ、ヴェネツィア国際映画祭では脚光を持って向かい入れられ、何とこの作品の名前を模した「監督・ばんざい!賞(Glory to the Filmmaker! award)」が設立され、現在まで続いていたりします。ちなみに、本作公開から翌々年の2009年の受賞作は『ランボー/最後の戦場』、受賞者はもちろんシルヴェスター・スタローン。

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『アキレスと亀』(2008年)

《あらすじ》売れない画家の真知寿は、幼い頃に両親を亡くしてからも画家になることだけを夢見てきた。そんな純朴な真知寿に惹かれた幸子と真知寿はやがて結ばれ、夫婦で創作活動に没頭していくが……

北野作品芸術(スランプ)三部作の3作目。全2作とは再度打って変わり、純粋な人間ドラマへと回帰した一作で、過剰なユーモアは鳴りを潜めて芸術家・画家の苦悩が描かれる。印象的なのが売れない画家の悲惨すぎる人生を数十年に渡り繰り広げられること。悲惨すぎて憐れみすら感じてしまうくらいであるが、ユーモア溢れる展開で悲しい物語の中、笑いが散りばめられている。ヒロインを演じている麻生久美子がモノすっごい美人で人当たりも良く、「ああ、こんなお嫁さん欲しいなあ」と思ってしまう部分も見所。

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『龍三と七人の子分たち』(2015年)

《あらすじ》金も居場所もなくなり、毎日くすぶった生活を送っていた元ヤクザの元組長、龍三。ある日オレオレ詐欺にひっかかってしまった龍三は、詐欺で人々を騙す若者たちを成敗しようと、昔の仲間を呼び寄せて世直しに立ち上がる。

主役の老人たちの年齢が72歳という高齢で、さらに久々のコメディ映画ということで話題になった異色のヤクザ映画。かなりブラックな老人ネタ・ヤクザネタで埋め尽くされていたものの、過去の北野作品のように、作品に破綻を持たすような内容になっていません。真っ向からエンターテインメント映画として作られ、『アウトレイジ』二部作の後ということもあり分かりやすさの強調した作風はとにかく面白い。事実、本作は『アウトレイジ』を凌ぐ大ヒットを記録、北野作品の歴代興行収入では『座頭市』に次ぐ16億円。「若い頃の落とし前で指がない為不器用になった」という場面は爆笑してしまいます。ちなみに、中尾彬の孫娘役で“あの”清水富美加が出演している。

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3、『アウトレイジ』と『アウトレイジ ビヨンド』

関東の暴力団組織“山王会”の内部抗争を描いた『アウトレイジ』と、“山王会”と関西の凶暴な暴力団組織“花菱会”の全面抗争を描いた『アウトレイジ ビヨンド』。前述の通り、特徴は強烈な怒号シーンと凄惨な暴力シーン。改めてそれぞれのあらすじをおさらいしましょう。

《『アウトレイジ』あらすじ》関東最大の暴力団山王会の若頭・加藤は直参の池元組組長・池元に、池元と付き合いのある村瀬組を締めるよう苦言を呈する。そこで池元は配下の大友組組長・大友に、その役目を任せるが・・・。

《『アウトレイジ ビヨンド』あらすじ》関東最大の暴力団組織・山王会の抗争から5年。関東の頂点を極め、政治の世界に進出するなど過剰に勢力拡大を進める山王会に対し、組織の壊滅を図る警察が動き始める。関西の雄ともいえる花菱会に目をつけた警察は、表向きは友好関係を保っている東西の巨大暴力団組織を対立させようと陰謀を企てる。そんななか、以前の抗争中に獄中死したはずのヤクザ・大友が生きていたという事実が持ち出され、突然出所を告げられる。

さて、北野本人が語る通りヤクザの狡猾さや裏切りがテーマになっているので、予想していなかった展開になっていくのが非常に面白い本作。実は以下のような共通点が。

 

■場を引っ掻き回して嫌われた人はヒドい死に方をする!

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これ、『アウトレイジ』ではテンプレートのようになっている展開。例えば、初作『アウトレイジ』で國村隼が演じた池本組長。自分で手を汚したくないので、傘下の大友組に汚い仕事をさせるズル賢い人物。最終的に大友組の怒りを買ってしまった池本組長は、舌を潰されて射殺されるという非常に痛々しい死に方をします。『アウトレイジ ビヨンド』では加瀬亮。前作『アウトレイジ』で大友組を裏切り、壊滅の発端となった人物・石原を演じており、『〜ビヨンド』では山王会本部の若頭まで出世。若くして出世した為、古参幹部にはすご〜く嫌われています。とはいえ、「大友が生きていた」という事実が発覚するととてつもないくらいの取り乱しようを見せます。何故なら大友組を裏切り、山王会に忠誠を尽くして出世した為、大友に大きな恨みを買っている為です。大友との古くからの付き合いで性格も知っている為、「出会ったら殺されてしまう」と発狂寸前になってしまいます。しかし、呆気なく大友の罠に引っかかってしまう石原。大友の「野球やろっか」の一言で、映画中最大の暴力シーン“死ぬまでピッチングマシーンで剛速球を当てられる”という結末に。

 

■抗争相手へのあまり効果のない“お詫び”!

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『アウトレイジ』シリーズでは、毎回相手ヤクザへの情けないお詫びシーンがあるのも面白いところ。「行きたくないけど…」的なことを言いつつも、しっかりとお詫びに向かう様子はまさにサラリーマン!そして、おきまりの展開…「こんな端した金持ってきやがって」から始まる怒号シーン。最初の『アウトレイジ』では、そのお詫びにより内部抗争が勃発するキッカケになっています。最新作『アウトレイジ 最終章』でも効果のないお詫びシーンがさらなる火種を生んでしまいます!必見です。

 

■主人公「大友」と魅力的な相棒の存在!

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『アウトレイジ』シリーズの主人公は、古き任侠精神と仁義を重んじるヤクザ「大友」。最初の『アウトレイジ』では組織の中心でないが故に抗争で振り回される組長と、ちょっと悲しい立ち回りになっており、続く『アウトレイジ ビヨンド』では、ヤクザ稼業に嫌気がさしているものの、結局戻らざるを得なくなるさらに哀愁が漂う人物に。しかし、それぞれの作品で“意外と弱気”な大友を支える相棒的存在が。『アウトレイジ』では大友組の若頭として活躍する狂犬ヤクザ、椎名桔平が演じる水野。『アウトレイジ ビヨンド』では過去に敵対していたものの大友の任侠精神に共感した、中野英雄演じる木村。それぞれの人物がナイスガイすぎる活躍をする為、大変男らしくカッコいい。『アウトレイジ 最終章』では演技派俳優の大森南朋演じる市川が相棒的ポジションに。前2作の相棒と同じく、大友に共感している為、その忠誠心は相当なモノ。『〜最終章』ではラストに近づくにつれ、その関係性に思わずグッとくる瞬間があります。

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4、最新作!『アウトレイジ 最終章』について

さて、改めてこちらもあらすじをおさらいしてみましょう。

《『アウトレイジ 最終章』あらすじ》関東最大の暴力団組織・山王会と関西の雄・花菱会との抗争後、韓国に渡った大友は日本と韓国を牛耳るフィクサー、張会長のもとにいた。花菱会幹部の花田は取引のためやって来た韓国でトラブルを起こして張会長の手下を殺してしまい、張グループと花菱は緊張状態へと突入する。激怒した大友は日本に戻り、過去を清算する好期をうかがっていた。その頃、花菱会ではトップの座をめぐる幹部たちの暴走がはじまっていた。

このあらすじの通り、今回メインになっているのは韓国の張グループと関西花菱会の抗争、そして一作目のような花菱会による内部抗争がテーマになっています。3部作の中でも特にドラマ性が強くなっており、実は怒号シーンもあんまり多くはありません。とはいえ『〜ビヨンド』の怒号シーンが凄まじ過ぎたこともあり、二番煎じになる懸念もあれば賢明な判断であったかと思います。

今回すべての発端となるのがピエール瀧。近年は『凶悪』で魅せた鬼畜ヤクザの役や極悪警官の役など、強面の俳優として名を馳せ、俳優として板も付いてきたピエール瀧。今回も強面で屈強なヤクザかと思いきや、ビックリしてしまうほどの小物ヤクザを演じています。また、前作でも強烈な印象の残した西野役の西田敏行。今回ではほぼ全編に渡って出ずっぱりで、凶暴な演技を多数披露しています。

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『アウトレイジ 最終章』は過去作『HANA-BI』で受賞経験のあるヴェネツィア国際映画祭でクロージングを飾る作品として選ばれ、現地でも高評価を受けたとのこと。最後最後のズル賢さ悪足掻きをする男たちの映画はぜひ劇場で観た方が良いです。おそらく。